2017年2月11日土曜日

「楽譜を読むチカラ」読書メモ3

読書メモ:『楽譜を読むチカラ』
ゲルハルト・マンテル (著), 久保田 慶一 (翻訳)
音楽之友社 (2011/11/12)



7. 音色


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弦楽器は弓にかかる圧力と弓が動く速さによって、音色すなわち倍音スペクトルを変化させることができます。圧力をかけずに弓を速く動かしますと、音は母音の「オ」に近くなりますし、圧力を強くしますと母音の「イ」に似てきます。

ピアノでも多くの音色を作ることができます。ひとつひとつの音の強さを変えずに、さまざまな音色が出せるかどうかが、昔から議論されてきましたが、ペダルを使えば音色の幅はかなり広くなります。…打鍵、アーティキュレーション、ペダルは、相互に補完し合う三要素です。これに和音の構成音ひとつひとつの強さの調整が加わります。どの音を一番大きく響かせるかで、同じ和音でありながら違った響きになりますね。


8. テンポ

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テンポをコントロールする方法は、簡単な練習で身につけることができます。2オクターブの何の変哲もない音階を、最初はだんだんに速くして、最後にだんだん遅くして終わるのです。…

・次第に速くして、同時に次第に大きくする
・次第に速くして、同時に次第に小さくする
・次第に遅くして、同時に次第に大きくする
・次第に遅くして、同時に次第に小さくする

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リズムとテンポをコントロールするには、より小さな音価に分割することがポイントです。…たとえば、2分音符→4つの8分音符の場合、…「心の中で」2分音符の2番目の8分音符にアクセントをつけると、効果はてき面に現れます。

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音楽にはつなぎ目がたくさんあり、部分のつなぎ目、気分や雰囲気が変わるところ、形式の切れ目などです。曲の開始と終わりも「つなぎ目」です。静寂から音楽へ、そして音楽から静寂への接点だからです。


9. 自分らしさをどこまで出していいの?

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「どこまで」という問いは、演奏で許される範囲を決めることです。…趣味のよい演奏であるためには、どこまで許されるのか、そしてどこまですると、誇張やおふざけやまがい物になってしまうのか、ということです。

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「どこまで」に答えるためには、「オーバーだったり」あるいは「もの足りなかったり」という実験が必要です。(解釈の可能性)

・できるだけのことはしたのか?
・どのくらい変化させるとやりすぎなのか?

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表現についても同じです。ある部分を…ばかばかしいと思えるほど、一度大げさに表現してみることです。これは結構楽しく発見も多いものです。…求められているのは、曲をできる限り自分なりに解釈して演奏することなのです。

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「正しい」演奏というのはたくさん存在するのです。…テクニックの練習でも本番の演奏でも、ひとつだけの演奏の姿を追求するのではなく、許容できる範囲の中で多くの可能性を追求することが大切です。この解釈の多様性というのは、すべてのパラメーターにおいて、純粋にテクニックのレベルでも芸術的なレベルでも存在するのです。

101
最後にひとつ、大切なことは、ある作品がどのくらい深い演奏解釈に耐えられるのかということです。あまり解釈しても仕方のない曲を解釈し過ぎて深読みをしてはいけません。

101
「どこまで」について考えるときには、好みの問題がつきものです。

102
…演奏に関する重要なルール…。たとえ小さな音型、動機あるいはゼクエンツの一部を演奏する場合であっても、いつもより広い範囲で見て考えなくてはならないということです。…「目先ではなく広く」…。


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