2016年7月11日月曜日

読書メモ『パルランド 私のピアノ人生』5

読書メモ:『パルランド 私のピアノ人生』
(高橋アキ、2013年、春秋社)
高橋アキ公式サイト


PART 4 アキ オンステージ・オフステージ

103 秋山邦晴の文章から
(クセナキスの言葉)
「人間は心で考え、その考えでもって感ずることができる。人間はわけることのできない総体なのだ。」
音を聴くことによって考える。それによって新しい感受性がまた開かれていくということが必要なのだ。

ぼく(秋山)など(高橋アキを)端から見ていて、「知的」というレッテルよりは、「考える」ことの好きなピアニストといったほうがより近いように思う。

ところで知的といえば、わが国では冷静で冷たい人間に与えられることが多いことばだろう。ピアニストなどは、そんな「知」はいらない。感受性がつよく、個性的で、指がよく回る技術さえ人一倍そなえれば、充分なのだ、といった奇怪な考えが横行している。それは大きな誤りだ。

たとえば、指がよく動くような訓練で現代曲は弾けるか?
いつか高橋アキが語っているのを興味深く感じたことがあった。…この曲(クセナキスの《エオンタ》)のピアノ・パートのある部分では、一秒間に音が30個ぐらいあったりする。10本の指でどうやってその複雑な音の動きを演奏できるのだろう。ところが彼女によると、頭がその音を理解したとき、指が動くようになったという。指の訓練だけでは指は動かないのだ。頭脳と指とは一体のものなのだ。まさにクセナキスのいうように頭で感じ、心で考えることも必要なのであろう。

108(ネタ)
ジョン(レノン)とヨーコがバンク・ストリートのアパートに住んでいたとき、(ジョン)ケージは隣に住んでいて、…

111
武生(たけふ、福井県)の音楽祭のアドバイザーも何年かやりましたね。今も武生国際音楽祭はあるけど、細川俊夫さんがやっている…

113
…時々、コンサートに出向くけど、いつも同じ顔ぶれが50人ぐらいいて、広がりがないように見受けられる。やっぱり社会にもうちょっとオープンに発言というか、出て行かないと、仲間だけで褒めあっていちゃだめだな…と。
…方向性が見えないって言ったら生意気だけど、現代音楽とは一体何なのかみたいなところから見据えていかないと先細りしちゃうんじゃないですか。いつの時代でも現代の音楽って難しいですよね。

122
武満(徹):最初の音楽的なことやマテリアルについては、ある程度は五線譜の上で考えますよ。けれども、その後はヴァイオリンならヴァイオリンの響きでもって考えたいし、それが遠くから聞こえるとか、近くで聞こえるとか、そういうふうに考えていくんですよ。
高橋:あっ、それは演奏する方としても感じます。遠近の感覚や、触覚で触っていくような感じが、最初はわからなくても、弾いていくうちにだんだんと見えてくるんです。それが武満さんの音楽の独特さに思えます。

125
…それはどの音楽だってそうだけど、クラシックなどでもそうですが、書いてあるとおりに音にしていっても音楽にならない。そこに付加的要素というか、余白余韻みたいなことを感じ取ってルバートとかダイナミクスの案配を考えなくてはいけなくなるわけで。結局は、どう感じてどう表現するかということに大きく関わってくるんですよね。

127(ネタ)西村朗の《二台のピアノと管弦楽のヘテロフォニー》の演奏@カーネギーホール(西村に懇願されて引き受けた演奏会)
西村:二台ピアノの相手は、アキさんの推薦でフレデリック・ジェフスキでしたが、まさか彼が出てくるとは思わなかった。しかし、凄いコンサートでしたね。

137
…三つのコンサートの中でも印象が深かったのは、イタリアの今年81歳になる作曲家ジャチント・シェルシの作品だった。特にヴァイオリンとオーケストラのための曲は、現代音楽を奏きなれたオランダのラジオ・オーケストラのメンバーが、この曲のあまりの神秘的な美しさに、演奏しながら感動に震えると言っていた通り…

144
その頃、私はクセナキスやシュトックハウゼンなどの作品を弾くにつけ、個々ばらばらな音を集めて組み立てていくそのやり方に、新しいピアニズムを感じて感嘆していたのだった。
それは例えばクラシックのピアノ曲の大部分が、オーケストラや人間の声の代用品の役割をピアノに押しつけて、その足りないところを人間の想像力による錯覚で補わせているのとは全く違うものなのである。
もっとも、この"錯覚"を起こさせる技術というのもとてもおもしろいことなのではあるが…。
しかしピアノという楽器の構造から考えると、クセナキスなどのピアノの使い方のほうがかえってピアノの機能をストレートに生かしている、ということができるかもしれない。それはまさに、クセナキス自身の言うように、エネルギーが渦巻く音の星雲のようだ。



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