2015年1月29日木曜日

シャンドール ピアノ教本4:基本動作②五指運動と音階と分散和音

2つ目の動作は「五指運動と音階と分散和音」。ここで重要なのは、それぞれの指がもっとも自由に「投げ」の動作を行えるポジションに、腕(前腕・上腕)の位置を左右・上下に調整することである。前腕の筋肉と打鍵する指が常に一直線になるように。

またレガートの場合は、フレーズの初めで手首の位置をやや低めにして、終わりに向けて徐々にあげていく。こうすることにより、前の音のダンパーによる消音が柔らかく自然になる。

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『シャンドール ピアノ教本―身体・音・表現』 読書メモ
 ジョルジ シャンドール 著、岡田 暁生 監訳(春秋社、2005/2/1)
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 第2部 五つの基本動作 


第5章 五指運動と音階と分散和音


※数字はページ番号、赤字は私のマーク

80
能動的役割においても受動的役割においても、指は極めて重要…。腕や身体の動きのすべては、指を助けコーディネートすることを目的とする…。

指を…前腕の筋肉とそれを動かす 腱の延長として考えることは、非常に重要である。(下図参照)…前腕と上腕を適切な位置において調節し、それによって個々の指を助けてやらない限り、…真の指の独立というものは決して得られない…。



82
腕および手首が個々の指と無理なく連動するためには、二つの調整動作が不可欠である。前腕および手首の(1)水平面における動きと、(2)垂直面における動きである。

86・87
親指を使うときはいつも、手首を低めなければならない。
親指を決して掌の下に持ってこない!

88
5の指は…前腕の筋肉に加えて、…手の側面の特別な強い筋肉を持っている。これらの筋肉は強くすることが可能で…この筋肉による補強が必要なのである。

93
ポジションを変化させると、手や腕によって「投げ」の動作を指に加えることが可能になり、それによって指のスピードと力を増大することができる。

重音や和音の場合、前腕は両端の音のほぼ真ん中に持ってくるようにする。

94
ピアノ・テクニックの点で分散和音は、本質的には拡大され敷衍された音階であって、…。…テクニックは全く同じであるが、指と指をつないで調整する動作が、音階よりも分散和音の方が大きくて広いのである。

96
(鍵盤の端に向かう音階において)3や4の指に続いて親指で弾かねばならない瞬間が近づいてきたら、上腕(そして肘)をわずかに外側へ向け、掌の横に沿って親指をわずかに持ち上げ、次に、親指による打鍵の準備のため手首をわずかに下げ、それからそれから親指を静かに下ろす…。

100★
音をまとめる(グルーピング)…レガート奏法
音楽的および技術的グルーピング

グルーピングと関係してくるのは、レガート奏法であり、フレージングであり、複数の動作(技術パターン)を組み合わせる技術である。

102
真のレガート、音の真のグルーピングは、腕(前腕と上腕)の動作を統合することによってのみ達成しうる。…手首のポジションをやや低めにして…弾き始め、幾分高めにした手首で終わるようにする

104
ダンパーが落ちてくる速度は、指が鍵盤を離す際の速度によって変わってくる。…指を徐々に鍵盤から離す技術を養わなければならない。…ダンパーと指と腕の巧みな結合が、真のレガートのためには必要なのである。

105
…ある指はゆっくりと持ち上げ、隣の指は普通の速度で下ろすのは、極めて難しいのである。このもんだいを解決するためには、腕をゆっくり持ち上げるのがよい。…こうして徐々に前の音を消し去ることで、幻影ではない、真のレガートを作ることができる。

106
音楽家としてのセンスを量る有効な目印の一つは、その人のフレーズの終わり方である

109
ひとたびこれらの動作を習得してしまったなら、それ以上練習をしたりしないように。さっさとレパートリーに取り組んだ方がよい。


ポイント


「五指運動と音階と分散和音」での重要なポイント。

  1. それぞれの指がもっとも自由に「投げ」の動作を行えるポジションに、腕(前腕・上腕)の位置を左右・上下に調整することである。前腕の筋肉と打鍵する指が常に一直線になるように。
  2. 真のレガートを実現するにはダンパー(鍵盤を離す速度)と指と腕の巧みな結合が必要である。そのため、フレーズの初めで手首の位置をやや低めにして、終わりに向けて徐々にあげていく。
  3. 鍵盤の端に向かう音階においては、親指を掌の下に入れないこと。腕(そして肘)をわずかに外側へ向け、掌の横で打鍵すること。



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